歯を守るための力のコントロール Ⅻ

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

歯を守るための力のコントロール Ⅻ

こんにちは、歯科医師の武田です。
「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて
お話しさせていただいております。
どうぞよろしくお願いします。

◆ 歯科口腔外科における各種顎関節脱臼の定義

習慣性顎関節脱臼は過開口などによって、関節包や靭帯の
伸展や外側翼突筋円板付着部の損傷などが生じ、関節包が
緩んで脱臼が習慣的になった病態をいう。関節結節の平坦化、
不適合な義歯や臼歯部欠損の放置が関与していることもある。
経過が長いものでは顎関節の後方組織が肥大、瘢痕化し整復が
困難になる。また陳旧性脱臼は、脱臼後放置され、3~4週間
が経過して関節部に二次的な器質的変化を生じて徒手整復が
困難となった状態を指す。顎関節脱臼は前方脱臼が大部分。

◆ 顎関節脱臼の治療法(再脱臼防止法)

1. 脱臼整復法

① 非観血的徒手整復法
非観血的徒手整復法は新鮮例に対する第一選択療法であり、
施療者が患者の前方から徒手整復するヒポクラテス法と
施療者が患者の後方から徒手整復するボルヘルス法がある。
整復の際、関節痛により徒手整復法が困難な場合は、
各種除痛法(消炎鎮痛薬の内服、局所麻酔薬の関節腔内注射、
静脈内鎮静法、全身麻酔)などを併用する。また咀嚼筋の
緊張が強く下顎頭の整復が困難な場合には、全身麻酔下に
筋弛緩薬を用い筋弛緩したうえで、再度整復を試みる。

② 観血的整復法
上記の各種徒手整復法が奏効しない場合には観血的整復法が
選択される。
⑴ 下顎骨牽引による整復法
⑵ 関節開放による整復法 があり
前者には、下顎角下縁に皮膚切開を加え、下顎角部の骨を剖出し、
骨把持鉗子を用い下顎枝を前下方に牽引し整復する方法と、
下顎枝前縁に粘膜骨膜切開を加え下顎切痕を剖出し、
下顎切痕に単純鈎をかけ牽引整復する方法である。
なお、整復後の患者管理には、消炎鎮痛薬の内服とともに
包帯やチンキャップを用いた開口制限を実施する。

2. 再脱臼防止法

顎関節脱臼の整復後の再脱臼防止法には、自己抑制、顎包帯法、
チンキャップ、顎間固定などによる開口制限、咬合治療などの
非観血的治療法があり、それらが奏効しない場合、および不可能
な場合(長期使用による褥瘡形成などにより継続使用不能など)
には観血的治療法が適応されている。

◆ 観血的治療法

1.下顎頭前方運動抑制法

① 関節構造の改造による方法

⑴ 関節隆起形成法
関節隆起を骨切りし、より高く形成する方法。
⑵ 頬骨突起形成法
関節隆起直前で頬骨突起を骨切りし、頬骨弓後縁
を下方に押し下げる方法。なお高齢者では骨の弾性が
低下するため、頬骨弓後縁を下方に押し下げる際に
側頭突起基部の骨折を起こし、遊離骨片となることが
あるので注意を要する。

② 移植・埋入物を障害物とする方法

⑴ 関節隆起前方骨移植法
関節隆起前方に自家骨ブロックを移植し固定する方法

⑵ 関節隆起前方ハイドロキシアパタイト埋入法
自家骨ブロックは吸収するので、代わりに
ハイドロキシアパタイトブロックを埋入する方法

⑶ 関節隆起前方チタンプレート埋入法
T字型チタンミニプレートを関節隆起前方外側に固定し、
縦の部分を内側に屈曲し障害する方法。ただし、術後に
チタンミニプレートの破折が1/4の患者でみられたという
報告があるので、長期間の経過観察が必要。

③ 瘢痕拘縮を利用する方法

⑴ 口腔粘膜・側頭腱膜短縮術
下顎骨前縁に骨に達する縦切開を加え、骨膜剥離をした後に
切開両端を縫縮し瘢痕形成を促す。

⑵ 関節包縫縮術
脱臼を繰り返すことにより弛緩した関節包を縫縮する方法で、
関節鏡視下で行う方法と皮膚切開を加え関節包を剖出して行う
方法がある。

⑶ 関節円板縫合固定術
関節円板を円板後部結合組織に縫縮する方法で、
関節鏡視下で行う方法と関節包を開放して行う方法がある。

⑷ 外側翼突筋切除法
外側翼突筋が下顎頭内側に付着する腱状の部分で切離し、
下顎頭の前方滑走を障害する方法と、外側翼突筋の切離に
とどまらず筋束も切除する方法がある。

2.下顎頭整復容易化法
脱臼した下顎頭を整復しやすくする方法

① 関節円板切除法
② 関節隆起切除法
③ 下顎頭切除法

◆ 術式選択の考え方

習慣性脱臼の防止が目的であることから、顎運動機能を
著しく損なう可能性のある関節包内に侵襲が加わる手術、
術後の制御が難しいことから瘢痕拘縮利用法、身体他部
に移植片を取るための侵襲を加えざるを得ない手術は
第一選択とはならない。
また、長期にわたる経過観察では脱臼の再発、移植物の吸収、
埋入物に破損などの報告があり、多数例における手術成績の
比較報告はないので各手術法の優劣、選択基準はない。
なお、錐体外路系障害、脳血管障害やパーキンソン病などの
中枢性疾患により不随意開口運動が著しい場合、
ヒステリー等精神神経障害、その他の神経筋異常患者は
慎重な対応が必要。

AGOキャップ

歯の健康、美しさを保つには、
定期的なクリーニングがとても大切です
ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。
ご来院お待ちしております。