口と認知症の意外な関係⑴

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

口と認知症の意外な関係⑴

こんにちは。歯科医師の村重です。

一度暖かくなったと思いきやまた寒さがぶり返してきたりと、体調を崩しやすい季節ですね。春を待ち遠しく感じます。

さて、今回のブログは近年話題になりつつある、口と認知症の関係についてです。

認知症は全世界的な問題であり、2015年現在、世界 で約4700万人の患者がいるとされ、20年ごとにその数は倍増し、2030年には約7500万人、2050年には13000万人以上に達すると予測されています。

認知症の割合は後期高齢者で急増し、 日本では85歳 以上で40%90歳以上で60%が罹患するとされています。

認知症は、患者本人のADLを著しく低下させ、かもそれが長期間続くため、癌はもとより、 虚弱や身体機能の障害に比べても介護の負担がきわめて大きい病気です。

このように、認知症・認知機能低下への対策は喫緊 の課題であるものの、いまだに有効な治療方法が確立されていないため、これまで危険因子の特定、ならびに予防や進行の遅延の方法についてさまざまな検討がされている状況です。

ここで、認知症・認知機能低下と口腔に関連する論文をいくつか紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

①歯の数や歯周病は認知に影響する
アメリカの国民健康栄養調査 (NHANES, National Health and Nutrition Examination survey)のデータを 用いた、追跡期間が32年と非常に長い研究です。28~70歳の男性 597人を対象に、歯周病と認知機能との関係について分析したところ、歯数が少ない者、歯周ポケットが深い者、 歯槽骨吸収量が多い者では、認知機能低下のリスクが高いことが示された。さらに、45歳以上の者ほど、そのリスクがより高い傾向がありました。
このことから、中年期以降の歯周状態や歯の欠損が認知機能に影響することが示唆されたと言えます。

②咀嚼能力と認知機能は関連する。
この研究は、77歳以上の557人を対象とした質問調 査による横断研究です。
歯の欠損(多数歯)は認知機能と有意な関連はみられませんが、咀嚼能力の自己評価は年齢、性別、教育 歴、うつ傾向、精神疾患を調整しても、 認知機能に有意な関連がありました(オッズ比1.72)。これは後期高齢者で歯が少なくなった場合は、歯の本数より咀嚼機能のほうが認知機能に、より重要であることを示唆しています。
次回は、口と認知症の関係についてのその他の論文や、なぜ歯や咀嚼が認知機能に影響するのかについてお話させていただきます。