「安全に美味しく⑥〜摂食・嚥下障害に対する訓練〜」

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

「安全に美味しく⑥〜摂食・嚥下障害に対する訓練〜」

こんにちは、歯科医師の村重です。

前回ご紹介した摂食・嚥下精密検査であるVEやVFによって、

摂食・嚥下障害と診断された場合の対応のひとつに

摂食・嚥下訓練があります。

今回のブログではこの訓練について紹介します。

摂食・嚥下訓練には食べ物を用いない「間接訓練」と

食べ物を用いる「直接訓練」のふたつがあります。

以下に間接訓練の具体例を記します。

 

①肩・頸部・胸郭の関節可動域訓練

肩や首、胸郭の動きに制限がある場合は、

口腔期の運動や嚥下を妨げるので、

筋肉のリラクゼーションを行い、

関節の動きを広げるように動かします。

 

②舌・口唇・頬など口腔周囲のマッサージ・運動

食べ物や飲み物を取り込んで咀嚼し、咽頭に送る働きをする

舌や唇などの口腔器官の動きと動きに関わる筋肉を

働かすために行います。

マッサージを行って硬くなった筋肉を柔らかくしてから、

嚥下体操の様に自分で行う運動やリハビリ職

(主として言語聴覚士)が他動的に動かして行う運動、

舌圧子などで抵抗を加えて行う運動などを行います。

 

③ブローイング

鼻から空気が漏れ出る方や、唇を閉じる力・呼吸の力が弱い場合は、

コップやペットボトルに入れた水をできるだけ

長く優しくストローで吹く、巻き笛を拭くなど

ブローイング(吹く練習)を行います。

 

④咀嚼訓練

ガムやするめなどを使用して、噛むために必要な

筋肉を鍛える訓練を行います。

 

⑤頭部挙上訓練

 

嚥下に必要な喉頭挙上を促すために、舌骨上筋群、

喉頭挙上筋群の筋力強化を図ります。

仰臥位で足の先を見るように頭を上げます。

一人で行うのが困難な方は介助者が頭を持ち上げて

自動介助で行います。

 

⑥嚥下・反射訓練

嚥下反射を促すために唾液を飲み込む練習(空嚥下)を行います。

飲み込みが弱い方には、舌を前に突き出したまま

空嚥下をする(舌-突出嚥下法)方法もあります。

凍らせたスポンジで喉を刺激(アイスマッサージ)したり、

氷を口に含んだり(氷なめ)などの冷却刺激や、

チューブを鼻や口から通す刺激を与えて嚥下反射を

誘発することもあります。

 

⑦プッシング

声帯が閉じにくい場合、動きが良い方の声帯を

より内転方向に動かして声門閉鎖をカバーするため、

両手を胸の前で押し合うことや、壁や机などを

手の平で押すことをしながら強く「あー」、

「えい」などと発声します。

 

⑧Kポイント刺激法

口が開きにくい方は、綿棒や舌圧子などで

Kポイントを刺激することで、口が開きやすくなり、

食塊の咽頭への送り込み、嚥下反射が起こりやすくなります。

 

⑨メンデルゾーン手技

「ごっくん」をする時に喉頭が十分に上がらない方や、

食道の開きが十分でない方に、徒手で喉仏の挙上を

保ちながら飲み込む練習をして、喉頭が挙上する

感覚の学習を促します。

 

⑩発音訓練

嚥下と構音を行う器官は同じなので、

単語や文章の発声練習を行い、嚥下に必要な器官の運動、

筋肉の働きを促します。

 

次回は直接訓練についてご紹介します。