歯を守るための力のコントロール ⑬

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

歯を守るための力のコントロール ⑬

こんにちは、歯科医師の武田です。

「歯を守るための力のコントロール」について

数回にわけてお話しさせていただいております。

どうぞよろしくお願いします。

 

◆ 歯冠補綴物の咬合面精度と対合歯列印象の考察

 

鋳造冠は歯冠補綴の診療において最も普遍性のある補綴物である。

顎や歯列の精度のよい模型を得ることは臨床において基本的な事柄で、

とくに補綴学においては大部分の作業が間接法により行われており、

補綴物の適合度、咬合状態の精査などをはかる上で重要な事柄となる。

 

鋳造冠は辺縁歯周組織の健康状態を維持するとの発想から開発された

補綴物で、辺縁部の適合という面からは適合度はほぼ満足し得る状態

にまで達している。

一方、鋳造冠の咬合面は、口腔内試適時に高く、その量は200~300㎛

にもなるとの研究もある。

鋳造冠の咬合面は、高さに関しては確かに相当の精度で咬合調整

することができる。しかし顎口腔系各部の要求する精密な咬合接触関係を

実現するためには、口腔内での咬合調整に多くの時間と熟練が要求され、

術者がワックスパターン採得時に意図した咬合接触関係が口腔内にまで

維持されることは少なく、多くの場合に鋳造冠を削合した結果としての

咬合接触関係となる。

これでは作業模型本来の役割は十分に活かされていない。

 

ワックスパターン採得時に咬合面に与えた咬合接触関係をそのままの形で

実現すべく検討を加えていくことが必要で、換言すれば、

間接法の各ステップがもつ鋳造冠の咬合面形態に対する影響度を検討したい。

 

 

①印象トレーの選択

咬頭嵌合位での咬合接触点数が少ないと、模型の咬頭嵌合操作時の安定性が

低くなる為、患者の咬合状態による適正な咬合接触点数を印象でき得る

大きさのトレーの選択が重要。

寸法精度のよい模型を得るためには

適合の良い、変形のない個人トレーを作製することが理想であるが、

既製トレーを使用する場合は、保持力のある強固なトレーを選択し、

同時にトレーの後縁はモデリング、ワックスなどで封鎖し、ストッパーを付し

開放端であるトレー後縁部方向への変形を減らすことは有効である。

 

②混水比

一般にアルジネート印象材の混水比が大きい(水量が多い)と、

硬化物の強度が低下し、より大きな寸法変化が起こるとされている。

 

③印象材の厚み

トレーと原型との間隙、すなわち印象材の厚さは印象、さらに模型寸法精度

に大きな影響を及ぼすことになる。歯冠補綴を対象とした1歯から数歯に至る

ものについてPhillips、Mannは最高の精度を得るためには印象材の厚さは

少なくとも3mmを必要とし、Tylmannは6mmを必要とすると報告している。

 

④印象撤去時期

製造者による印象材の指示撤去時期がかなり早いことは、すでに弾性的性質

の経時変化から指摘されており、弾性的性質が充分に発揮される時期

(初期硬化から2分後)まで印象を保持すべきである。

また、トレー挿入が完了したら、トレーを動かさないように、硬化時間内には

トレーが動揺しないように、加圧しないで位置を保持することも重要。

 

⑤印象撤去法

アルジネート印象して得られた歯型の寸法変化を検討した総山は

「印象撤去時の変形の原因として、最も痛切に感ぜられたのは

吸着抵抗による変形である」と述べた。

印象撤去速度と残留ひずみとの関係では、撤去速度が小さくなると

残留ひずみは大きくなるので、印象の撤去は、

可及的に咬合平面に垂直な方向で一気に行う。

 

 

ロールワッテを歯肉頬移行部に入れ水分を含ませ、水分を押し出しながらトレーを外す

 

 

印象の変形はアンダーカットの大小にも大きく影響され、

隣在歯のアンダーカットの影響も大きく、支台歯と隣在歯の歯間部に

はさまれた印象材の狭小な部分が印象撤去後に永久変形を残す。

印象の撤去時に歯間部にある印象材が隣在歯の最大豊隆部を通過する際、

近遠心的には圧縮力を受け、頬舌的には引張りを受ける結果生ずる。

(近遠心径に比べ頬舌径が大きくなる傾向)

歯牙の豊隆や歯軸方向の相違によるアンダーカットは印象撤去時に

陰圧や摩擦とともに大きな応力が加わり、印象が撤去方向へ

引っぱられるようになり、応力が緩和されても印象の変形の原因となる、

印象材の層を厚くし内部応力を減少させ、

印象撤去速度を速めることである程度まで

アンダーカットの影響は防げるので、

印象材が薄くなることは極力避けることが重要(保持の際に加圧しない)

 

 

 

鼓形空隙のアンダーカットはブロックアウトしておく

 

対合歯列は比較的安易に印象され模型製作が行われていて、

その結果として両歯列模型間には寸法変化に差異が生じ、

この差が咬合の高さに影響を及ぼす。

印象の高さ(垂直的長さ)が増すと印象面積が大きくなり

撤去力は増加し、撤去方向の偏位や撤去時間の延長が生じる。

対合歯列は歯牙の最大豊隆部を越えないように浅めにすれば、

印象材がアンダーカットに流入する量も減り、

極力均一な厚みの印象材をえられ、印象撤去時に応力が一部分に

集中するのを防止するとともにトレーへの保持をより確実にする。

 

 

対合歯だからと安易に考えず、

トレー保持の際は加圧せず、印象材の厚みを維持し、

深くとりすぎないことは容易に改善できるので実施を望む。

 

印象法を改善することによって、咬合器上の咬頭嵌合位を

口腔内での咬頭嵌合位へある程度まで近づけることはできるが、

各歯牙が口腔内でもつ動揺量を模型上に表現することはできない。

上下の歯列が接触した状態、軽く咬合した状態、強く噛みしめた状態、

どういう状態にある歯列を模型に表現すべきか、目的を見定め、

それに対して合致する模型の製作法を考えていかなければならない。

 

 

歯の健康、美しさを保つには、

定期的なクリーニングがとても大切です

ぜひタニダ歯科医院で定期健診を。

ご来院お待ちしております。