歯を守るための力のコントロール ⑮

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

歯を守るための力のコントロール ⑮

こんにちは、歯科医師の武田です。

「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて

お話しさせていただいております。

どうぞよろしくお願いします。

 

◆ インプラントの咬合

 

天然歯とインプラントが混在する口腔内において長期的に安定した

結果を得るためにはインプラント埋入位置・方向も重要であるが

骨、インプラント体、上部構造、咬合、咀嚼が一体となるように

咬合付与し機能させる必要がある。

 

インプラントと天然歯は根本的に異なる点が構造的にも機能的にも

多数ある。特に、インプラントに歯根膜組織が存在しないことによる

圧感覚受容器の欠如からくる感圧能力の低下や咬合圧下での被圧変位量は

装着時の咬合調整とその後の咬合状態の管理を天然歯以上に難しくさせている。

 

天然歯の被圧変位量については、1.4~2.3Kgの垂直圧を受けた時に

8~28㎛沈下するとされ、一方でインプラントの被圧変位量は3~5㎛に過ぎない。

よって、インプラントと天然歯が混在している症例では、軽度の噛みしめ時に

同時に接触させると強度の噛みしめ時に天然歯が沈下するため、

インプラントのみによって全咬合圧を受けオーバーロードとなる。

これを避けるためにインプラントプロテクテッドオクルージョンが

1994年にMischに提唱された。これは顎骨に埋入されたインプラントは

歯根膜をもたないため、機能下での被圧変位量が小さい、また感覚受容器を

介した神経筋機構による下顎運動の調整性が劣る。

これらに起因するインプラントへのオーバーロードを回避するため、

インプラントの咬合高径を低くし、咬頭嵌合位で28㎛(歯根膜の変位可能分)

の緩衝隙を与える様式。

 

 

また1997年にRangertはインプラント上部構造への咬合接触について

①咬合面の中央に付与する

②咬頭傾斜を緩くする

③咬合面の面積を小さくする

④動揺のある隣在歯と均衡させる調整を行う

⑤臼歯部の1歯欠損の場合、咬頭嵌合位は弱い咬合付与にするべき

としている。

 

SheridanやMichalakisによれば、咬合力とは

①強さ

②持続時間

③分散

④方向 の4つの因子からなり、

インプラントの咬合のゴールはこれら4因子が基本であるとしている。

すなわち、力の方向はインプラント体に対して圧縮力となるようにし、

剪断力より圧縮力に強いことから、水平や側方の力よりも

インプラント体の長軸方向に力を与えるべきである。

一方で、一定量の咬合力は骨のリモデリングにつながり、そうでなければ萎縮する。

しかし、あるレベルを超えると骨吸収の引き金となる可能性がある。

また、咬合接触の付与は1点より複数点のほうが

カンチレバーによる曲げモーメントがはたらかないと報告されている。

 

スクリュー固定かセメント固定かでも、両者ともに利点・欠点があるが

インプラント補綴に付与する咬合接触点を長軸寄りにするという点では

スクリュー固定はアクセスホールがインプラントの長軸中心部に存在するため

圧倒的に不利で咬合接触部がインプラントの軸心からズレることによって

側方力が生じやすい。

オーバーロードはインプラント周囲の骨吸収(マージナルボーンロスMBL)

の加速因子となる可能性を指摘したうえで、

これにプラーク起因のインプラント周囲炎が重なると頸部の骨吸収は

憎悪するとし、上部構造への好ましくない咬合力を軽減することにより、

生物学的・機械的トラブルを減らすことができる。

さらにオーバーロードによるMBLはインプラント体とアバットメント界面

のマイクロムーブメントにより周囲炎を発症させる、逆に言えば、

咬合調整をしっかり行い、インプラント体への曲げモーメントの力を最小限にし

オーバーロードにならないようにすれば機能後のトラブルは抑制できる

 

Lambrechtsらは臨床研究でインプラントの対合歯は1年後に

大臼歯部で29㎛、小臼歯で15㎛のエナメル質の摩耗が発生するとし、

これが起因した咬合力の方向の変化や早期接触の発生する可能性を指摘。

すなわち、最善の咬合を付与したとしても歯列、周囲組織は経時的に変化する

ということを念頭に置いてインプラント治療を計画したい。

 

 

歯の健康、美しさを保つには、

定期的なクリーニングがとても大切です

ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。

ご来院お待ちしております。