2024/04/04
皆様、こんにちは。歯科医師の西田です。
日々診療に携わっていると、気になるお口の中の異変に、時折遭遇することがあります。皆様は、前癌病変と呼ばれる状態をご存知でしょうか?
前癌状態、前癌病変とはその名のとおり癌になる手前の状態・病変のことで、後者の方が癌化する確率が高いとされています。例えば、肝臓癌については肝硬変、大腸癌については大腸ポリープや家族性ポリポーシスなどが当てはまります。それでは、口腔癌についての前癌病変、前癌状態について代表的なものを紹介します。
口腔癌の前癌病変には白板症、紅板症が挙げられます。
・白板症
口腔白板症とは1978年のWHOの診断基準によれば「口腔粘膜に生じた摩擦によって除去できない白色の板状あるいは斑状の角化性病変で、臨床的あるいは病理組織学的に他のいかなる疾患にも分類されないような白斑」と定義されています。高齢者に好発し、50~70歳代に多く、性別では男性に多く傾向があるとされています。発生部位は頬粘膜、舌、歯ぐき、上顎や舌の下の粘膜など。原因は定かではありませんが、タバコ、アルコール飲料、合わない被せ物や欠けた歯による刺激、ビタミンA,B複合体の欠乏、糖尿病、高脂血症、ホルモン失調などが誘因になりうると言われています。癌化率は4.4~17.5%とされています。
治療方としては症状が重くなければ誘因と考えられるものを除去した後に経過観察します。重いものについては粘膜の外科的切除を行う場合があります。
・紅板症
紅板症とは、白板症と同様に頬粘膜、舌、歯ぐき、上顎などに好発するものです。粘膜に発赤したビロード状の紅斑ができ、50~60歳代に発症する頻度が高いです。極めてまれな病変ですが癌化率が40~50%と高いと言われています。治療方法は、外科的切除を行った後に長期の経過観察を行っていくことが多いです。
次に前癌状態について、代表的なものを紹介していきます。
・扁平苔せん
口腔粘膜に慢性的な炎症が起こり、白いレース状の模様となって現れます。頬粘膜が好発部位ですが、舌、歯ぐきにも見られることがあります。自覚症状は、刺激痛、口の荒れを感じることがあります。お口の外にも発症することがありますが、お口の中では慢性の経過をたどり、多くは出来たり消えたりを繰り返します。癌化する確率は0.4~6%とされています。
通常口内炎は、1~2週間くらいで治るものですが、いつまでも治らない、出血する、痛みが続く、盛り上がってきた、硬い部分がある、などの症状がある場合は、ご相談ください。症状によっては、口腔外科に紹介させていただくこともあります。