2024/09/12
こんにちは。訪問担当の岩本です。
歯を失った患者さんから、
「サメみたいに何度も生えてくれればいいのに」
という話を聞くことがあります。
全く同感です。
今回は「歯が生える薬」の
研究についてお伝えします。
無歯症という疾患があります。
名前の通り、
歯が生えてこない疾患です。
レントゲン上で親知らずが
見当たらないなど、
「永久歯が28本揃っていない」
といった部分的な無歯症は
珍しくありません。
胎生期の環境や薬物の影響など
様々な要因で起こり、
全人口の約10%にみられると
言われています。
無歯症の中でも、
遺伝的な原因により
多くの歯が欠如(6本以上)している
症例を先天性無歯症と言います。
こちらは約0.1%の発症率だそうです。
成長過程において、歯数が少ないと
食べる機能が損なわれ、
成長に悪影響を及ぼします。
また顎の骨が成熟する前の
幼少期から無歯症であるため、
義歯やインプラントでの対応が
困難です。
従来は成人後に
これらの治療を行うしか
方法がなく、
歯の再生治療の開発が
強く望まれていました。
2007年、
医学研究所北野病院
歯科口腔外科
髙橋克先生の研究チームは、
USAG-1というたんぱく質が
歯の成長を抑制することを
発見しました。
髙橋先生によると、人には
乳歯、永久歯に次ぐ
「第三の歯の芽」が存在し、
殆どの場合、成長に伴って
無くなってしまうと
考えられているそうです。
この歯の芽が無くなる過程を
抑制することによって、
新たな歯を獲得できる
可能性が生じるとのことです。
そこで、USAG-1が
体内で作られないようにする
治療薬を開発しました。
この治療薬
(抗USAG-1抗体「TRG035」)
を投与された実験動物においては、
歯数を回復させることができました。
2022年には動物に対して行う
前臨床試験が実施されました。
2024年9月からは、
人に対して初めて行う
First-in human試験が
約一年かけて実施される
予定であり、
北野病院、
トレジェムバイオファーマ株式会社、
国立研究開発法人日本医療研究開発機構の
産官学の連携によって準備が進められています。
この試験は薬剤の安全性確認を
主体としているため
無歯症患者ではなく、
わずかな欠損を持つ健常者が
対象とされるものです。
この試験後は、
先天性無歯症患者を対象とする
試験が行われ、
2030年の製造販売開始が
目標とされているそうです。
研究が進めば、歯を失っても
義歯を作らずに済む時代が
来るのかもしれません。