2024/12/12
こんにちは。歯科医師の上原です。
今年も残すところあと半月ほどとなりました。
寒い日が続きますが、くれぐれも体調を崩さぬよう気をつけてお過ごしください。
今回はお口の中にできる石についてお話しさせていただきます。
お口の中にできる代表的な石といえば、みなさんがよくご存知の歯石です。
歯石は歯に付着したプラークが除去されずに長期間堆積することで石灰化した沈着物です。
プラークは歯磨きなどで除去できますが、
歯石になってしまうと自分で取り除くことができないため歯科医院で除去してもらう必要があります。
歯石があると歯肉に炎症が生じやすくなるため、歯石除去は歯周病予防のためにも大切です。
ついてしまった歯石は歯科医院で除去してもらい、日頃のセルフケアでプラークのうちに取り除くよう心がけましょう。
さて、お口の中にできる石としてもう1つ唾石というものがあります。
唾石は、唾液腺内や管内に唾液の成分であるカルシウムやリンが沈着してできる石です。
唾液腺(唾液を作る工場)には大唾液腺と小唾液腺があり、
唾石は大唾液腺の中でも顎下腺に形成されることが多い疾患です。
症状ですが、唾石により唾液の排出が阻害されると食事中に唾液腺が膨れ上がったり、
痛みを伴うこともあります。また唾石が形成されていても唾液の分泌を邪魔しない位置にあると無症状で経過することもあります。
唾液が分泌できない状態が長く続くと、唾液腺自体が機能を失ってしまいます。
歯科医院で撮影したパノラマX線写真(お口全体の写真)で偶然見つかることもあり、
唾石が見つかった場合には、位置の精査のためにCT検査を行うのが一般的です。
治療は、痛みや腫れなどの急性症状がある場合にはまず抗菌薬を内服していただき炎症を緩和させますが、
基本的には外科的に摘出を行います。顎下腺唾石の場合、顎下腺管の出口は下顎前歯舌側のひだ付近にあるため、
唾石の位置が出口に近く、唾石を触れることができる場合には局所麻酔下に口腔内の粘膜を切開して摘出が可能です。
顎下腺内や顎下腺に近い位置の唾石の場合は、入院しての全身麻酔下での摘出となります。
この場合唾石だけを摘出できるケースと唾石とともに顎下腺を含めて摘出するケースがあります。
顎下腺を摘出する場合には、あご下の皮膚を切開して摘出を行うことになります。
施設は限られますが、20年ほど前よりほぼ切開を必要としない内視鏡下での唾石の摘出も行われており、
ここ数年で内視鏡下で低侵襲に摘出を行う施設は増えてきています。
症状があれば歯科医院を受診されると思いますが、無症状に経過する場合もあり、
その場合には久しぶりに受診して撮影したパノラマX線写真で見つかることもあります。
症状が無くても歯科医院を受診することで、お口のクリーニングを行って歯周病を予防していくだけでなく、
他の疾患を早期にみつけることも可能となりますので、定期的な受診をおすすめします。