2025/08/28
こんにちは、歯科医師の武田です。
「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて
お話しさせていただいております。
どうぞよろしくお願いします。
◆ 咬合平面と顆頭の動き
歯冠修復治療を行うにあたり,咬合平面を整えようと調整することは,
日常当然のこととして行われている。
では,咬合平面にはどのような意義があるのだろう.
また咬合を調整するということは,咬合の問題が起きないように
配慮するということである。
そこで、これらの問題と咬合平面はどのように関わってくるの
だろうという観点から考察したい。
咬合平面は,平面といっても緩やかなカーブを描いている。
歯に加わった力を受け止めるために歯軸の方向と関連した力学的要素
もあるが,動的咬合(機能運動時,非機能運動時)での干渉を,
緩やかな彎曲があることで回避するという要素もある。
だたし,カーブがきつくなると,干渉を引き起こしやすくなる.
すなわち臼歯離開咬合に関与していると考えられる。
顎関節が安定した状態であり,適正な咬合高径でバーティカルストップ
が確立し,アンテリアガイダンスが確保されていることにより臼歯離開咬合
が得られることが,咬合治療の指標となる.それは,顎関節,筋,歯周組織,
歯への負荷の軽減に有益であるからである。
犬歯から第二大臼歯まで,それぞれを人工的にガイド歯になるようにして
作業側顆頭の動きを観察した実験では、顆頭の運動時の力の方向は関節結節,
そして関節円板に向かって沿うように動くことが解剖学的見地から
適正と考えられる.第一小臼歯(かろうじて第二小臼歯も)までは,
動きの方向は関節結節に向かっているが,
大臼歯ガイドでは関節結節から離れるように動くようになる。
顆頭が適正な運動範囲から外れれば,顆頭に付着している外側翼突筋や靱帯
にとって負荷となる可能性がある。
顎運動でのガイド歯が犬歯から臼歯になるにつれて,
咀嚼のストロークは水平になっていく.水平的咀嚼ストロークは,
咬頭干渉を起こしやすい。
この干渉は歯への揺さぶりのメカニカルストレスとなる.
さらに筋肉・顎関節へのメカニカルストレスとなる.
側方滑走運動をガイドする面を、
上顎の近心に向いた咬合小面と下顎の遠心に向いた咬合小面で誘導するM型と
逆に上顎の遠心に向いた咬合小面と下顎の近心に向いた咬合小面で誘導するD型
に分けて考えると、D型は作業側顆頭を後方寄りに誘導しやすく
側方滑走運動のガイド面としてはM型が好ましい。
M型ガイドに比べてD型ガイドにおいては作業側顆頭を後外方に誘導し,
また顎関節断層撮影から3次元再構築した顎関節の空隙を比べると
D型では後方の関節隙が狭くなるという傾向がある。
よって関節包後部の炎症の発症因子として、側方運動時に作業側顆頭を
後方に変位させるガイドの影響が考えられる。
咬合異常が顎機能障害の発症因子であるとする主張に科学的根拠がない
とする意見もあるが、咬合は顎機能障害の発症因子ではないとする
科学的根拠も明確ではなく、特に顎関節への負荷を問題にするとき
咬合の問題を除外して考えることは著しく合理性を欠くように考える。
スタビライゼイションスプリントは、顎関節および関連する筋組織の
疼痛および機能障害に対 して一般的に使用される治療術式である。
その作用機序はかならずしも明らかになってはいないが、
主な効果として均等な歯の接触を与えることによって咬合力を分散させ、
関節構成体に加わる過剰な圧を軽減し、早期接触による部分的な偏った
刺激を断ってブラキシズムのような異常筋活動を減少させるとともに、
顎関節を安定せる効果があり、またスタビライゼイションスプリントは
可逆的かつ非侵襲的な治療法である。
犬歯誘導とグループファンクションとでの咬筋と側頭筋の筋活動を
調べた研究では,犬歯誘導の方が優位に筋活動が少なかった。
しかし,治療するに当たり,すべての症例で犬歯誘導にできるか,
といえば困難であろう。そのような時に有効なガイド歯の研究がある、
犬歯,または犬歯から第二小臼歯までのアンテリアグループファンクション
では,筋活動が少ないが、大臼歯のガイド参加は筋活動の増加を認めている。
筋活動が大きければ,筋疲労に繋がる可能性がある。
臼歯部離開咬合の顎口腔系への優位性は、適切なスピーの彎曲や
ウィルソンの彎曲を有する歯列は,アンテリアガイダンスが適正であれば,
臼歯離開咬合を得やすいと考えられる。
また,左右の咬合平面のなす角度の測定実験結果から,
正常者群は1.4±0.8°であったのが,TMD患者群では3.8±1.7°と有意に大きく,
前頭面で左右的なバランスは2°以内が生体にとって
許容範囲のようであるという興味深い報告がある。
歯や顎関節あるいは筋肉への荷重をコントロールするための診査の一部として、
咬合平面を適正に評価すべきと考えられる。滑走運動時に臼歯部離開が十分に
得られないときは,咬合性外傷が生じる可能性が強いので,咬合平面の評価が
特に重要となる.だたし,咬合平面はアンテリア・ガイダンスが
その役割(臼歯部離開)を十分に果たせる状態であれば,
その方向・傾きは許容性がある。
咬合平面は,解剖学的に理想と思われるものに一致させることは目標であるが,
機能的観点から柔軟に決定することも可能である.
動的咬合時に加わる負荷が問題を起こすが,その動的咬合の始まりと
終末の位置が顎口腔系にとって安定した位置であることも重要である。
咬合平面には許容性があるが,これらが達成されていることが重要である。
歯の健康、美しさを保つには、
定期的なクリーニングがとても大切です
ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。
ご来院お待ちしております。
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