2024/09/26
こんにちは。
訪問歯科医師阿部です。
今回は、入れ歯の種類と、そのお手入れ
方法についてお話ししたいと思います。
●入れ歯の種類
取り外しできる入れ歯には、歯を全て
失った人が使用する総入れ歯と、
部分的に歯を失った人が使う部分入れ歯
があります。部分入れ歯は残っている歯
の数や場所によって、大きさや形が
変わります。
プラスチックでできたものや、金属で補強
したものなど、様々なタイプがあります。
●入れ歯の清掃の必要性
入れ歯にも歯と同じように食べかすや
プラーク(歯垢)が付きます。
入れ歯のお手入れが不十分だと、
・口臭が発生しやすくなる
・口内炎の原因になる
・入れ歯に色素や歯石が沈着する
・部分入れ歯の場合、バネ(クラスプ)
がかかっている歯が虫歯や歯周病に
なりやすくなる
など、様々なトラブルが起こります。
これらのトラブルを防ぐためにも、
入れ歯は毎日のお手入れで清潔にしておく
ことが大切です。
●入れ歯のお手入れについて
毎食後洗うことが理想的ですが、
せめて寝る前に一日一回は、
丁寧に洗いましょう。
入れ歯は必ず外して、入れ歯専用ブラシ
や歯ブラシを用いて流水下で清掃します。
その際落として破損したり、排水口に
流さない様に注意しましょう。
下に水を張った洗面器などをおくと
よいでしょう。
熱湯を使用すると、入れ歯を変形させて
しまう恐れがあるので、洗浄には水か
ぬるま湯を使うようにしましょう。
歯磨き粉は義歯に傷をつけてしまうので、
使わないようにしましょう。
入れ歯の歯と歯の間や、粘膜に触れる面の
くぼみ、バネ(クラスプ)の内側など、
丁寧に磨きましょう。
義歯洗浄剤には洗浄、殺菌、消臭効果が
ありますので、併用するとよいでしょう。
しっかり洗浄剤の効果を得るためには、
入れ歯の表面についた汚れはきちんと
洗い流しておきましょう。
基本的に夜間は入れ歯を外して洗浄し、
外した入れ歯は水につけて保管しましょう。
乾燥させるとひび割れや変形を
起こしてしまいます。
入れ歯の容器の水は毎日取り替えてください。
●入れ歯を外した後のお口のケア
入れ歯を外した後は、お口の中もきちんと
お手入れしましょう。
お口の中の、歯のない部分は、軟らかい
歯ブラシやスポンジブラシなどでやさしく
清掃してください。
部分入れ歯の方は、これ以上歯を失うことの
ないよう、残っている歯をしっかり
磨きましょう。
特にバネのかかる歯や、入れ歯と接している歯
の面は汚れやすいので、念入りに磨きましょう。
入れ歯を長く快適にお使いいただくために、
毎日のお手入れを忘れずに行いましょう。
2024/09/19
こんにちは歯科医師の法貴です。
まだまだ暑い日が続いていますので皆さん体調崩さないように気をつけてお過ごしください。
さて今回はお薬の話です。
一般歯科診療所において投与される薬剤は、
抗菌薬と鎮痛薬の割合が多いと思います。
抗菌薬の投与については、外科的治療に際して投与される予防的抗菌薬投与と、
実際に歯性感染症を発症した場合に投与される治療的抗菌薬投与に大別され、
それぞれガイドラインにより投与する薬剤、投与する期間などが規定されています。
歯科診療所で抗菌薬の治療的投与が実施される疾患として歯性感染症が挙げられます。
歯性感染症 は、炎症の程度や範囲により1群から4群 に分類され、
その重症度に応じて第一選択抗菌薬、第二選択抗菌薬、
注射用抗菌薬が個別に推奨されています。歯性感染症の原因菌は、
好気性菌であるStreptococcus属、嫌気性菌のPre votella属、
Peptostreptococcus属が中心であり、
歯性感染症の治療ではこれらに感受性のある抗菌薬を選択する必要があります。
第1群の歯周組織炎,第2群の歯冠周囲炎に対してはペニシリン系のサワシリン ®が第一選択薬です。
ペニシリンアレルギーの場合は、
ダラシン、ジスロマック、クラリスのいずれかを選択します。
歯性感染症は二相性感染症といわれており重症化すると嫌気性菌の検出頻度が増加します。
嫌気性菌はβ- ラクタマーゼというβ- ラクタム系抗菌薬を加水分解してしまう酵素をもつ菌が多いため 、
第3群の顎 炎 (膿瘍形成が認められる第1群、第2群を含む)に対してはβ- ラクタマーゼ阻害剤を
配合したペニシリン系抗菌薬であるオーグメンチン® が第一選択薬とされて います 。
第3群の顎炎のなかでも開口障害、嚥下困難をともなう重症例および第4群の顎骨周囲炎では、
抗菌薬の静注が基本となるため病院歯科口腔外科や大学病院歯科部門へ治療を依頼します。
歯性感染症に対する抗菌薬効果判定の目安は3 日とされており、
増悪の際は切開排膿などの消炎処置の追加 、投与量 / 回数変更 、
他剤への変更を考慮します。標準的な治療期間は7日間です。
何かわからないことがあれば気軽に相談してください
2024/09/12
こんにちは。訪問担当の岩本です。
歯を失った患者さんから、
「サメみたいに何度も生えてくれればいいのに」
という話を聞くことがあります。
全く同感です。
今回は「歯が生える薬」の
研究についてお伝えします。
無歯症という疾患があります。
名前の通り、
歯が生えてこない疾患です。
レントゲン上で親知らずが
見当たらないなど、
「永久歯が28本揃っていない」
といった部分的な無歯症は
珍しくありません。
胎生期の環境や薬物の影響など
様々な要因で起こり、
全人口の約10%にみられると
言われています。
無歯症の中でも、
遺伝的な原因により
多くの歯が欠如(6本以上)している
症例を先天性無歯症と言います。
こちらは約0.1%の発症率だそうです。
成長過程において、歯数が少ないと
食べる機能が損なわれ、
成長に悪影響を及ぼします。
また顎の骨が成熟する前の
幼少期から無歯症であるため、
義歯やインプラントでの対応が
困難です。
従来は成人後に
これらの治療を行うしか
方法がなく、
歯の再生治療の開発が
強く望まれていました。
2007年、
医学研究所北野病院
歯科口腔外科
髙橋克先生の研究チームは、
USAG-1というたんぱく質が
歯の成長を抑制することを
発見しました。
髙橋先生によると、人には
乳歯、永久歯に次ぐ
「第三の歯の芽」が存在し、
殆どの場合、成長に伴って
無くなってしまうと
考えられているそうです。
この歯の芽が無くなる過程を
抑制することによって、
新たな歯を獲得できる
可能性が生じるとのことです。
そこで、USAG-1が
体内で作られないようにする
治療薬を開発しました。
この治療薬
(抗USAG-1抗体「TRG035」)
を投与された実験動物においては、
歯数を回復させることができました。
2022年には動物に対して行う
前臨床試験が実施されました。
2024年9月からは、
人に対して初めて行う
First-in human試験が
約一年かけて実施される
予定であり、
北野病院、
トレジェムバイオファーマ株式会社、
国立研究開発法人日本医療研究開発機構の
産官学の連携によって準備が進められています。
この試験は薬剤の安全性確認を
主体としているため
無歯症患者ではなく、
わずかな欠損を持つ健常者が
対象とされるものです。
この試験後は、
先天性無歯症患者を対象とする
試験が行われ、
2030年の製造販売開始が
目標とされているそうです。
研究が進めば、歯を失っても
義歯を作らずに済む時代が
来るのかもしれません。