訪問診療から学ぶこと

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

訪問診療から学ぶこと

こんにちは。訪問歯科医師の村山です。皆様、かわいいでしょう。

こちらの「うめちゃん」は私が在宅診療で拝見する患者様の大切な家族です。
2020年6月から診療を開始し今日まで訪問するたびに玄関で、
うめちゃんスマイルをみせて迎えてくれます。
患者様は高齢の女性で定期的な口腔ケアと、必要に応じて入れ歯の調整を行っていました。
今年に入り、どうしても調整では効かないほど入れ歯が合わず新しく作り直したところです。
治療の道具を持ち込み入れ歯作りの診療中も患者様の横でご家族様と一緒に見守ってくれます。
治療に時間がかかると途中で眠ってしまうこともありますが、
たいていはかわいい瞳でこちらを見てくれており、患者様ご本人も「かわいいね」と
大変な治療を受けて下さった後でも笑顔でうめちゃんに声をかけられます。
うめちゃんの家ではいつも穏やかな、優しい時間が流れています。
新しい入れ歯を装着した次の診療日には「痛みはなかったか、入れ歯が擦れて歯ぐきに傷はないものか」と
緊張して訪問しましたが「入れ歯があっているのか、少しお餅を入れたおぜんざいを召し上がりましたよ。」と
ご家族様が教えて下さり、調整はせずに診療を終えられ、今後は定期健診で伺うことになりました。

※写真使用を快諾して下さり感謝申し上げます。ありがとうございます。

さて、4月になると訪問先の施設様でも異動がある様です。
私がある施設を担当する事になり訪問を始めてすぐの頃「異常な歯ぐきの腫れ」がある患者様がいらっしゃり、
すぐに歯科口腔外科へ紹介しました。結果は歯肉癌。
ご家族様は年齢を考慮され治療は望まれず、そのまま施設でこれまで通り過ごされることになりました。
時が経つにつれ腫れは大きく広がり、痛みや出血も伴い食事しづらくなってきます。
その時、施設長様より「何とか食べられそうな物、食べやすい物はないですか。少しでも食べてほしい。」と
問い合わせのお電話があったのです。
ご家族様へは私から差し入れしていただきたい食べ物についてお電話しましたが
「施設長さんから既に聞いており次の面会で持参します。安心してお任せしています。」とお返事がありました。
残念ながらのちにこの患者様はご逝去されましたが、共に病と闘って下さった施設長様、介護士の方々の力は
本当に大きなものだと実感しました。
訪問診療で拝見するよりも当然ながら長い時間を共に過ごされるからこそ気付いて下さる事も多いのです。
この施設長様は今回、施設異動により一緒に仕事をする事はなくなってしまいました。
訪問の際には診療しやすい様にご配慮下さり、大変お世話になり感謝しています。
高齢社会となり日々の生活で介助を要する方が増えました。
医療提供の立場からしますとご本人様だけでなく、ご家族様や介護士の方等、
いつも一緒にいる方からの情報も大変重要となります。
どんな小さな変化や、歯科とは関係がないと思われる事でもどうぞ教えて下さい。