2025/09/25
こんにちは。歯科医師の岩本です。
皆さんは、食事をどのくらいの速さで終えていますか?仕事や家事に追われ、つい「早食い」になってしまう方も多いのではないでしょうか。

実は、早食いはお口の健康だけでなく、全身に様々な悪影響を及ぼすことが分かっています。
まず、かむ回数が減ることで唾液の分泌が少なくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
唾液には口腔内の汚れを洗い流す自浄作用や、虫歯を作る酸を中和する働きがあるため、しっかりかむことは口腔環境の維持に欠かせません。
さらに、あまりかまないまま飲み込むと胃などの消化器官に負担がかかります。
加えて、脳が「満腹」を感じる前に食べ終わってしまうため、必要以上に食べ過ぎて肥満や生活習慣病につながることもあります。
⭐「かむ力」のセルフチェック
では、普段の食事で「自分がゆっくりよくかめているか」を確認する方法はあるのでしょうか。
おすすめなのが、スマートフォンを活用したセルフチェックです。今は健康管理アプリが多く登場していますが、今回は「おくちトレーナー」というアプリをご紹介します。
「おくちトレーナー」https://www.morson.jp/o-trainer/
こちらは、かむ・飲み込む・口を動かすといったお口周りの機能を楽しくトレーニングできるアプリです。

カメラで食事中の顔の動きを撮影すると、咀嚼の回数が自動的に数えられます。
確かに、かむ度にきちんとカウントされていき、なかなか面白いです。
ゲーム感覚で使えるため、子どもから大人まで取り入れやすく、食事の際のかみ方の意識づけにも役立ちます。
「よくかむ」という行為は、一見すると小さなことに思えますが、歯と口の健康、そして全身の健康を守る大切な習慣です。
まずは食事の時間を少し意識して、ゆっくり味わうことから始めましょう。そして、アプリを活用して楽しみながらチェックを続ければ、長く習慣化しやすくなります。
日々のちょっとした工夫で、未来の健康は大きく変わります。
「早飯食い」から「ゆっくりよくかむ食習慣」へ、今日から一歩踏み出してみませんか。

2025/09/18
こんにちは、歯科医師の上原です。9月に入っても暑い日が続きますね。
暑さのピークは過ぎたとはいえ、体調管理にはお気をつけください。
さて、お口の中で下顎の内側や上顎の中央などにコブのような硬い膨らみがある方はおられるでしょうか。
これは骨隆起といって、歯ぐきの下にある顎の骨が通常よりも過剰に成長し、隆起している状態です。
骨隆起は病気ではなく、体の自然な反応の一部で、噛む力による負荷に顎の骨が耐えられるように過成長したものです。
骨隆起がよく出来る部位
① 下顎の内側

② 上顎の中央

③ 上顎や下顎の頬側

骨隆起ができる原因
骨隆起は上記のような噛む力が強くかかる部分にできます。
発生原因は解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
① 歯ぎしりや食いしばり、ストレス
人はストレスを感じると無意識のうちに食いしばったり、寝ている間に歯ぎしりをすることがあります。
歯ぎしりや食いしばりは、顎に対し過剰な力を加え骨に刺激を与える要因 となります。
この刺激が繰り返されることで、骨が厚みを増し骨隆起が形成されると考えられています。
② 環境要因や習慣
力仕事をする方やスポーツ選手などぎゅっと噛みしめたり上下の歯を長時間接触させる癖のある方、
また硬い食べ物がお好きな方も骨隆起の原因になる可能性があります。
骨隆起による問題
骨隆起自体は悪いものではなく、骨ですから特に問題がなければ治療の必要はありません。
しかし以下のような影響が出ている場合には適切な対処が必要です。
① 義歯の適合が悪くなる
大きな骨隆起があると義歯を装着した際にうまくフィットせず、
痛みや違和感をひきおこすことがあります。
② 粘膜が傷つく
骨隆起の表面を覆う粘膜は薄いため、硬い食べ物などの外部からの刺激により、
傷つきやすく痛みや炎症を引き起こすことがあります。
骨隆起の対処法
① 骨隆起自体は治療の対象ではありませんが、骨隆起によって義歯と干渉する場合や
口内炎が繰り返し生じる場合には、外科的な除去を必要とする場合があります。




② 骨隆起そのものを完全に予防することは難しいですが、ナイトガード(マウスピース)を装着することにより
骨隆起の背景となった過度な負荷を軽減することは可能です。
ナイトガードは、寝ている間の歯ぎしりや食いしばりを物理的に抑える効果があります。
ナイトガードを装着することで、噛み合わせによる圧力を均等に分散でき、
骨隆起の主な原因の一つである歯ぎしりや食いしばりよる顎への過剰な力を軽減し、
骨隆起の進行を抑制する効果が期待できます。
骨隆起は日常生活におけるストレスなどの影響を受けることもありますが、適切なケアにより症状の進行を抑制することが可能です。
特にナイトガードの使用は、骨隆起の原因となる歯ぎしりや食いしばりのコントロールに非常に効果があります。
もし骨隆起や歯ぎしり、食いしばりなどが気になる場合にはお気軽にご相談ください。
2025/09/11
こんにちは。訪問歯科医師の村山です。
日々の診療で高齢者と接する機会が多いのですが、よく耳にするのは「昔はこんなんじゃなかった。歳いきましたわ。」と、
身体の不具合を訴えられる言葉です。「歳を重ねる」ことに医学的定義があることをご存知ですか。
老化の定義と特徴
老化とは、成熟期に達した個体が徐々に身体諸機能の低下・減弱をきたして死亡するまでの過程をいう。
老化によって生じる身体機能の変化が老化現象である。老化には次のような原則がある。
・老化の過程は環境の変化を受けず、時間に依存しており、これは先天的な因子(遺伝子)に規定されている。
・どのような生物にもみられる普遍的な変化である。
・常に進行して非可逆性の変化をもたらす。
・その結果、生存に関して不利な条件をつくり、死の確率を高める。
以上の老化4原則に従った老化を生理的老化という。一方、動脈硬化、糖尿病などは加齢とともに増加する慢性疾患であるが、
このような疾患によって促進される老化は上記の4条件を満たすものではなく、病的老化と呼ぶことがある。老化を細胞単位で考えると、
基本的には臓器機能を担う細胞の数が減少することである。その結果、細胞間ひいては組織間の交流も阻害され、組織や臓器の機能は低下してくる。
上記のように、老化は加齢に伴う変化であり、進行性で誰にでもみられるものである。
しかし個体差が大きく、臓器による差もある。脳、運動器、腎、性腺などは老化現象が著しく、消化管、肝、甲状腺などは比較的少ない。
これまで疾患の原因として老化という最も重要な因子はあまり重きをおかれていなかった。
しかし、ほとんどの疾患の有病率が加齢とともに急激に高くなることは、老化が多くの疾患の発症に深くかかわっていることを示している。
例えば胃癌、肺癌などほとんど全ての癌の罹患率は加齢とともに指数関数的に高くなる。うっ血性心不全、心筋梗塞などの心疾患も加齢とともに増加する。
肺炎による死亡は小児では激減しており65歳以上の高齢者がその大半を占める。高齢者にとって肺炎は死につながりやすい疾患であるといえ、
老人性肺炎は誤嚥によるものが多い。脳梗塞や脳出血も加齢とともに増加している。
日本人の4大死因となっている疾患は全て加齢または老化とともに発症頻度が高くなっており、老化がその最も重要な発症要因になっている。
ここまで読まれると何も良いことが書かれていないと感じられたかもしれません。ただ歳を重ねることは誰にでも平等におとずれる変化であり、
受け入れざるを得ないものなのです。
