2021/09/02
こんにちは、歯科医師の池田です。
よくコマーシャルなどで
歯周病という言葉を聞くと思いますが、
実際どんな病気なのかを今回は載せようと思います。
歯周病は実は30歳以上の成人の約80%が
かかっているといわれるメジャーな病気になります。
お口のなかにはおよそ400〜700種類の
細菌がすんでいます。
これらの細菌は普段あまり悪いことをしませんが、
ブラッシングが充分でなかったり、
磨き残しが多かったり、砂糖を過剰に摂取すると
細菌がネバネバした物質を作り出し、
歯の表面にくっつきます。
これを歯垢(プラーク)といいます。
粘着性が高くうがいをした程度では落ちません。
このプラーク1mgの中には、
およそ10億個の細菌が住み着いているといわれ、
虫歯や歯周病を引き起こします。
その中でも歯周病を引き起こす細菌が
多く存在しているといわれています。
歯垢は取り除かなければ硬くなり、
歯石といわれる物質に変化し、歯の表面に強固に付着します。
これはブラッシングだけでは取り除くことができません。
この歯石の中や周囲に細菌が入り込み、
歯周病を進行させる毒素を出し続けていきます。
歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、
そこに多くの細菌が停滞し、歯肉の辺縁が
炎症を起こして赤くなったり、腫れたりしますが
痛みはほとんどの場合ありません。
痛みがほとんどないため、知らない間に
症状が進行していくことがよくあります。
さらに進行すると膿が出たり、歯が動揺してきて、
痛みが出てくるため咬むことが難しくなります。
歯周病とは、
この細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、
歯の周りの歯肉や、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。
そして、結果的に歯を失う原因となります。
健康な歯肉は、薄いピンク色をしています。
歯と歯の間に歯肉が入り込んで弾力がある。
また、歯肉が引き締まってブラッシングで
歯肉のきわを掃除しても出血しない状態です。
歯肉炎(歯周病の初期)の歯肉は、赤色の歯肉をしています。
歯と歯の間の歯肉が丸みを帯びて膨らんでいます。
また歯肉のきわをブラッシングすると出血がみられます。
腫れた歯と歯肉との間に歯垢が溜まり悪化していきます。
歯周炎(歯周病の中度から重度)の歯肉は、
赤紫色の歯肉をしています。
歯と接している歯肉がさらに腫れていきます。
また歯肉のきわのブラッシングで出血や膿が
出てくるようになります。
歯と歯の間に食べ物もよく詰まるようになります。
歯周病は、予防でき治療も可能です。
大切なのは予防、診断、治療、そしてメンテナンスです。
歯周病の原因は歯垢なので、
歯垢をためない、増やさないことが大切です。
主な治療法は、
正しい歯ブラシの方法で毎日ブラッシングを行い、
歯の表面わ歯垢のない清潔な状態にして
おくことが何より大切なことです。
そしてオフィスクリーニングで
歯肉の中まで入っている歯石を完全に取り除き
さらに歯の根の表面を滑らかにして
歯肉の炎症を引き起こす細菌を徹底的に除去することです。
口腔内の健康の保持のため歯科衛生士による
専門的なクリーニングなどのメインテナンスを定期的に行い、
口腔内の細菌量の管理が必要になります。
歯周病は初期状態のうちに治療を行うことで
骨を減らすリスクが軽減されます。
健診で歯肉の状態を確認することができるので、
もし不安があるようなら相談してみてください。
2021/08/26
こんにちは、歯科医師の武田です。
「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて
お話しさせていただいております。
どうぞよろしくお願いします。
今回は、補綴物を作る際に
歯を守るために考えていることをご説明します。
◆ スチュアートグルーブ
上顎第一大臼歯の中心窩から平衡側へ抜ける、
最も大きな咬頭である近心口蓋咬頭の内斜面がたびたび、
ファセットでピカピカ光っているのを見たことがあるかと思います。
それは、対合歯の下顎第一大臼歯の遠心頬側咬頭の内斜面との間で、
平衡側の干渉を起こしているためなのです。
そこでワックスアップの際、最初から干渉が出ないように
斜走隆線に沿って、中央窩から咬頭頂に向かって溝を形成し、
非作業側運動時に咬頭頂が通り抜けやすいようにしたのが
スチュワートグルーブです。
天然の歯は素晴らしい機能を持っていますが、
スチュワートグルーブはありません。
補綴物を作る際に、歯を守るための技のひとつです。
スチュアート咬合器を作った事でも有名な
アメリカ・ナソロジーの大家
チャールス・E・スチュワート先生が唱えた溝です。
◆ トーマスノッチ
トーマスノッチとは、元来これも天然歯には存在しないものです。
咬合面を形作る方法としての基礎的考え方である
『ワックスコーンテクニック』
これはナソロジーの大御所であるピーター・K・トーマスが、
オーラルリハビリテーションの際に行うワックスアップの
テクニックとして世界中に広めたものだとして知られています。
このワックスアップの際に付与する形態です。
ただ、その元になったのは1950年代にナソロジーの始祖である
エベリット・V・ペインが
人の歯の発生の順序に従って形態を作っていく
ワックスアデッドテクニックがオリジナルです。
すなわち、1) 咬頭頂 2) 辺縁隆線 3) 中央隆線
4) 三角隆線 5) 発育溝 6) 福溝 7) 副隆線
8) 窩 の8要素を発育順序に従ってワックスアップして行く方法です。
これを後にピーター・K・トーマスがワックスコーンテクニックとして
世界中に広め、ナソロジーのワックスアップの手法として使われました。
このワックスアップの手法はオルガニックオクルージョンとして
合理的な咬合の与え方があります。
上下の歯の接触形態は1歯対1歯の咬合を与える事と
天然歯には無い2つの特徴の一つとして前述のスチュアートグループがあり、
もう一つ、ピーター・K・トーマスが付与形態として与えているのが、
『トーマスノッチ』です。
これは上顎第一小臼歯のスタンプカスプは中心咬合位で
下顎第一小臼歯の遠心窩に入りますが、
この時上顎第一小臼歯の頬側三角隆線が接触しています。
この時作業側の運動で干渉する事が多く
上顎第一小臼歯を動揺させてしまう危険がある為
あらかじめ下顎第一小臼歯の遠心斜面にV字状のノッチを彫り込んでおき、
そこから僅かに頬側に溝を彫り込んでおきます。
このように、作業側でスムーズに離して負荷を和らげる事を
目的にしているテクニックが『トーマスノッチ』です。
何にしても歯を守る為には中心咬合位では臼歯が接触し、
一旦顎が動けば前歯が誘導する事が重要なのです。
大学を卒業して間もないころ(数十年前になりますが…)
熟読した、ナソロジーの歴史から、咬合接触点とその運動路など
非常に分かりやすく解説してあり、かみ合わせを考える
基礎的知識を得られ、いまだに引用されることも多い
本があるのですが、すでに廃版となっております。
余談ですが、昨今の傾向として
「良書 = 売れる本」ではないことを痛感します。
歯科に限らずですが。
「書物復権」提唱人みすず書房社長、小熊勇次様に感謝し
少しでも多くの良書が復刊されることを願っております。
お気に入りのひとつです。
歯の健康、美しさを保つには、
定期的なクリーニングがとても大切です
ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。
ご来院お待ちしております。
2021/08/25
こんにちは。院長の谷田です。
超高齢社会を迎えてますます重要になっているのが
歯科訪問診療です。
歯科訪問診療とは、歯科医院に通いたくても通えない方のために、
歯科医師がご自宅や各種施設へお伺いして、歯の診療をすることです。
当院ではこの歯科訪問診療に力を入れており、
曜日ごとに2~3人の訪問専属チームを組んで診療しています。
現在6台の訪問車両で診療に回っています。
また、訪問診療の他、各種施設の職員様や介護従事者様向けの
講演会や実習を定期的に実施しています。
タニダ歯科医院
〒669-1133 兵庫県西宮市東山台1-10-5
TEL:0797-61-2000
URL:https://www.tanidashika.jp/
Googleマップ:https://g.page/r/CUn1zmeIAnWtEAE
2021/08/19
こんにちは、川村です。
暑い夏になり、冷たい物を飲んだり、アイスクリームなどを食べる機会が多くな
ってきます。
歯がしみる・・・、そんな方も。。。
そこで、知覚過敏について書きます。
0.知覚過敏症って何?
象牙質知覚過敏症(Hys)のことで、歯ブラシの毛先が触れたり、冷たい飲食物、
甘いもの、風にあたった時などに歯に感じる一過性の痛みです。
特に齲蝕(虫歯)や歯の神経(歯髄)の炎症などの病変がない場合にみられる症
状を言います。
1.歯の構造
歯というのは、表面をエナメル質という組織で覆われています。
しかし、エナメル質という組織は歯の全周を覆っているわけではありません。
エナメル質の下には象牙質という組織があります。
この象牙質ですが、エナメル質とは違いがあります。
有機質・無機質の割合、硬度など違いは多数ありますが、今回のことで言えば、
細管の存在です。
象牙質には、象牙細管(象牙質にある細い管)があります。
この象牙細管は歯髄(歯の神経)の所までつながっています。
つまり、この象牙細管に刺激が伝わってしまうと神経が感じてしまいしみてしま
うのです。
ちなみに、エナメル質には細管はありません。
通常、象牙質はエナメル質や歯肉に覆われているので、こうした痛みを感じるこ
とはありませんが、極端に冷たいものなどではエナメル質の上からでも温度が内
部の象牙質に伝わって、歯が痛みを感じることもあります。
そもそも、歯自体が冷刺激に敏感です。
しかし、様々な理由で象牙質が露出すると、刺激が神経に伝達されやすくなり、
知覚過敏が生じるようになります。
象牙質が内部の神経にまで刺激を伝えるのは、先程出てきた象牙細管です。
この小さな細管は加齢などにより、少しずつ塞がってくることもあります。
このような場合には知覚過敏は起きづらくなります。
したがって象牙質が露出している時には必ず知覚過敏が起きるということではあ
りません。
2.象牙質が露出する原因
①歯肉退縮
歯肉の位置は加齢とともに少しずつ下がってきます。
それに伴って歯根が露出し、象牙質がむき出しの状態になります。
このような象牙質表面では、歯ブラシが触れたり、温度変化などの刺激で痛みを
感じることがあります。
持続時間は長くても1分以内で、時間が経てば痛みは消失します。
歯の表面に歯石がたくさん付いているような場合、それを取り除いた時にも同様
の状態となり、歯石をとっている時にも器具が象牙質表面に触れたり、水をかけ
て処置をするので、知覚過敏と同様の痛みを感じることがあります。
②破折
歯が破折してしまい象牙質が露出することがあります。
破折時には、残っている歯に亀裂が入っていることもあります。
亀裂の状態にもよりますが、歯の神経の部分にまで細菌が侵入して炎症を起こす
こともあります。
③摩耗、酸蝕症による象牙質露出
摩耗、酸蝕によりエナメル質がなくなると象牙質が露出します。
すり減り具合により症状が出る場合があります。
3.治療
①知覚過敏用歯磨きの使用
歯の神経の周囲をカリウムイオン(K+)が多く取り巻いていると神経の細胞が興
奮しにくくなるということを利用し、硝酸カリウムという成分を配合した歯磨き
剤を継続使用していきます。
②知覚過敏抑制剤の塗布
露出した象牙質の内部の小さな空隙を、歯と同じような成分の結晶や、その他
様々な物質で封鎖することで、歯の神経への刺激の伝達が遮断されて伝わりにく
くなります。
③露出した象牙質の被覆
知覚過敏のある象牙質表面を樹脂やセメントで被覆します。
④抜髄
知覚過敏は一過性の痛みですが、痛みの持続時間が比較的長いような場合や、
その痛みが非常に激しい場合には、歯の神経を取ることもあります。
あくまでも、最終手段になります。
歯の神経を取ってしまうと歯自体の寿命、耐久性が低下してしまいます。
極力、歯の神経は残しましょう。
もちろん虫歯が原因で歯がしみることはあります。
気になる方は早めに診てもらいましょう。