2024/09/19
こんにちは歯科医師の法貴です。
まだまだ暑い日が続いていますので皆さん体調崩さないように気をつけてお過ごしください。
さて今回はお薬の話です。
一般歯科診療所において投与される薬剤は、
抗菌薬と鎮痛薬の割合が多いと思います。
抗菌薬の投与については、外科的治療に際して投与される予防的抗菌薬投与と、
実際に歯性感染症を発症した場合に投与される治療的抗菌薬投与に大別され、
それぞれガイドラインにより投与する薬剤、投与する期間などが規定されています。
歯科診療所で抗菌薬の治療的投与が実施される疾患として歯性感染症が挙げられます。
歯性感染症 は、炎症の程度や範囲により1群から4群 に分類され、
その重症度に応じて第一選択抗菌薬、第二選択抗菌薬、
注射用抗菌薬が個別に推奨されています。歯性感染症の原因菌は、
好気性菌であるStreptococcus属、嫌気性菌のPre votella属、
Peptostreptococcus属が中心であり、
歯性感染症の治療ではこれらに感受性のある抗菌薬を選択する必要があります。
第1群の歯周組織炎,第2群の歯冠周囲炎に対してはペニシリン系のサワシリン ®が第一選択薬です。
ペニシリンアレルギーの場合は、
ダラシン、ジスロマック、クラリスのいずれかを選択します。
歯性感染症は二相性感染症といわれており重症化すると嫌気性菌の検出頻度が増加します。
嫌気性菌はβ- ラクタマーゼというβ- ラクタム系抗菌薬を加水分解してしまう酵素をもつ菌が多いため 、
第3群の顎 炎 (膿瘍形成が認められる第1群、第2群を含む)に対してはβ- ラクタマーゼ阻害剤を
配合したペニシリン系抗菌薬であるオーグメンチン® が第一選択薬とされて います 。
第3群の顎炎のなかでも開口障害、嚥下困難をともなう重症例および第4群の顎骨周囲炎では、
抗菌薬の静注が基本となるため病院歯科口腔外科や大学病院歯科部門へ治療を依頼します。
歯性感染症に対する抗菌薬効果判定の目安は3 日とされており、
増悪の際は切開排膿などの消炎処置の追加 、投与量 / 回数変更 、
他剤への変更を考慮します。標準的な治療期間は7日間です。
何かわからないことがあれば気軽に相談してください
2024/09/12
こんにちは。訪問担当の岩本です。
歯を失った患者さんから、
「サメみたいに何度も生えてくれればいいのに」
という話を聞くことがあります。
全く同感です。
今回は「歯が生える薬」の
研究についてお伝えします。
無歯症という疾患があります。
名前の通り、
歯が生えてこない疾患です。
レントゲン上で親知らずが
見当たらないなど、
「永久歯が28本揃っていない」
といった部分的な無歯症は
珍しくありません。
胎生期の環境や薬物の影響など
様々な要因で起こり、
全人口の約10%にみられると
言われています。
無歯症の中でも、
遺伝的な原因により
多くの歯が欠如(6本以上)している
症例を先天性無歯症と言います。
こちらは約0.1%の発症率だそうです。
成長過程において、歯数が少ないと
食べる機能が損なわれ、
成長に悪影響を及ぼします。
また顎の骨が成熟する前の
幼少期から無歯症であるため、
義歯やインプラントでの対応が
困難です。
従来は成人後に
これらの治療を行うしか
方法がなく、
歯の再生治療の開発が
強く望まれていました。
2007年、
医学研究所北野病院
歯科口腔外科
髙橋克先生の研究チームは、
USAG-1というたんぱく質が
歯の成長を抑制することを
発見しました。
髙橋先生によると、人には
乳歯、永久歯に次ぐ
「第三の歯の芽」が存在し、
殆どの場合、成長に伴って
無くなってしまうと
考えられているそうです。
この歯の芽が無くなる過程を
抑制することによって、
新たな歯を獲得できる
可能性が生じるとのことです。
そこで、USAG-1が
体内で作られないようにする
治療薬を開発しました。
この治療薬
(抗USAG-1抗体「TRG035」)
を投与された実験動物においては、
歯数を回復させることができました。
2022年には動物に対して行う
前臨床試験が実施されました。
2024年9月からは、
人に対して初めて行う
First-in human試験が
約一年かけて実施される
予定であり、
北野病院、
トレジェムバイオファーマ株式会社、
国立研究開発法人日本医療研究開発機構の
産官学の連携によって準備が進められています。
この試験は薬剤の安全性確認を
主体としているため
無歯症患者ではなく、
わずかな欠損を持つ健常者が
対象とされるものです。
この試験後は、
先天性無歯症患者を対象とする
試験が行われ、
2030年の製造販売開始が
目標とされているそうです。
研究が進めば、歯を失っても
義歯を作らずに済む時代が
来るのかもしれません。
2024/09/05
酷暑が終わり熱帯夜がなくなり、秋が近づいてきたことを感じますね。
こんにちは、訪問専任歯科医師の西川です。
皆様、死因ランキングと言われ思い浮かぶのは、ガン、肺炎、心疾患ではないでしょうか?
次に多いのが、不慮の事故です。
年齢階級別にみた不慮の事故による死亡
平成20年の不慮の事故による死亡数を不慮の事故の種類別に構成割合でみると、窒息が24.7%で最も多い。年齢(5歳階級)別にみると、5~9歳から65~69歳までは交通事故が最も多くなっている。また、年齢が高くなるにつれて、転倒・転落や窒息が多くなっている。(図9、統計表第9表)
図9 年齢階級別にみた不慮の事故の種類別死亡数構成割合 -平成20年-
このように中高年からの世代は年齢が上がるにつれ、交通事故よりも窒息死の割合が増えていきます。
ご自身やご家族が窒息で亡くなることのないよう、まず飲み込み具合などのチェックをしましょう。
詳しくは、
タニダ歯科ブログ2022/07/21「安全に美味しく④〜摂食・嚥下障害の評価〜」
をご参照ください。
もし、セルフチェックで嚥下機能に問題があったり、問題はなくとも機能維持向上のために体操もしてみましょう。
やってみよう、嚥下体操
ある程度からだに負荷をかけないと機能訓練にはなりませんが、ハリキリすぎて、肩や首を痛めてしまっては本末転倒です。
実際に行う際には「無理や痛みのない範囲で」を心がけて、周囲の人やものとの感覚を十分に考慮しましょう。
嚥下体操は次の9つの項目で構成されています。
また、セルフチェックと合わせて、歯科医院での定期検診を受け専門的なチェックもお勧めいたします。