2025/09/11
こんにちは。訪問歯科医師の村山です。
日々の診療で高齢者と接する機会が多いのですが、よく耳にするのは「昔はこんなんじゃなかった。歳いきましたわ。」と、
身体の不具合を訴えられる言葉です。「歳を重ねる」ことに医学的定義があることをご存知ですか。
老化の定義と特徴
老化とは、成熟期に達した個体が徐々に身体諸機能の低下・減弱をきたして死亡するまでの過程をいう。
老化によって生じる身体機能の変化が老化現象である。老化には次のような原則がある。
・老化の過程は環境の変化を受けず、時間に依存しており、これは先天的な因子(遺伝子)に規定されている。
・どのような生物にもみられる普遍的な変化である。
・常に進行して非可逆性の変化をもたらす。
・その結果、生存に関して不利な条件をつくり、死の確率を高める。
以上の老化4原則に従った老化を生理的老化という。一方、動脈硬化、糖尿病などは加齢とともに増加する慢性疾患であるが、
このような疾患によって促進される老化は上記の4条件を満たすものではなく、病的老化と呼ぶことがある。老化を細胞単位で考えると、
基本的には臓器機能を担う細胞の数が減少することである。その結果、細胞間ひいては組織間の交流も阻害され、組織や臓器の機能は低下してくる。
上記のように、老化は加齢に伴う変化であり、進行性で誰にでもみられるものである。
しかし個体差が大きく、臓器による差もある。脳、運動器、腎、性腺などは老化現象が著しく、消化管、肝、甲状腺などは比較的少ない。
これまで疾患の原因として老化という最も重要な因子はあまり重きをおかれていなかった。
しかし、ほとんどの疾患の有病率が加齢とともに急激に高くなることは、老化が多くの疾患の発症に深くかかわっていることを示している。
例えば胃癌、肺癌などほとんど全ての癌の罹患率は加齢とともに指数関数的に高くなる。うっ血性心不全、心筋梗塞などの心疾患も加齢とともに増加する。
肺炎による死亡は小児では激減しており65歳以上の高齢者がその大半を占める。高齢者にとって肺炎は死につながりやすい疾患であるといえ、
老人性肺炎は誤嚥によるものが多い。脳梗塞や脳出血も加齢とともに増加している。
日本人の4大死因となっている疾患は全て加齢または老化とともに発症頻度が高くなっており、老化がその最も重要な発症要因になっている。
ここまで読まれると何も良いことが書かれていないと感じられたかもしれません。ただ歳を重ねることは誰にでも平等におとずれる変化であり、
受け入れざるを得ないものなのです。
2025/09/04
こんにちは。歯科医師の井畑です。
今回は子供の虫歯について書いていこうと思います。
生まれてから役半年後くらいから生えてくる乳歯は、大人の歯である永久歯に比べ、
虫歯になりやすく進行が早いという特徴があります。また、こどもは症状をうまく伝えることができず、
虫歯の発見が遅くなることも多いです。しっかり歯磨きしていたはずなのに虫歯ができてしまったと、
ショックを受ける保護者の方も少なくないかと思います。
乳歯の虫歯は永久歯と比べて、進行が早いことが特徴です。
エナメル質が薄く歯質がやわらかいことや酸に弱いことが、
虫歯の進行が早い理由としてあげられるでしょう。
また、乳歯の初期の虫歯は白い場合もあります。乳歯は永久歯と比べて歯の色自体が白い場合があり、
その為発見が遅れ、進行することもあるでしょう。
乳歯も永久歯と比べて虫歯になりやすい特徴を持っています。
乳歯は歯の表面にあるエナメル質は、歯を溶かす原因である酸から歯を守る役割を果たしています。
しかし、乳歯のエナメル質の厚さは永久歯の半分程度しかありません。
そのため、エナメル質が溶かされやすく、虫歯になりやすいのです。
さらに乳歯は永久歯と比べて石灰化が進んでおらず、永久歯に比べて歯質がやわらかいです。
そのため、酸に溶けやすく、虫歯になりやすいといえます。
乳歯は自然に抜け落ちるから放置してもいいのかというと様々なリスクがあります。
乳歯の虫歯を放置することで、歯根部分に膿が溜まることがあります。
乳歯が抜け落ちても膿が残り、永久歯の形成不全や変色を引き起こす原因となるでしょう。
また、通常より早く乳歯が抜け落ちることがあります。
乳歯が抜けて空いたスペースに周りの歯が倒れると、歯並びに影響を及ぼします。
更に、虫歯がある状態は、虫歯がない人と比べると虫歯菌の活動が活発になっている状態が多いままだと言われています。
すると虫歯の乳歯が抜けても生えてきた永久歯が虫歯になりやすいです。
では、乳歯の虫歯を予防する方法として何があるでしょうか、ここでいくつか紹介します。
乳歯の虫歯予防には、毎日の歯磨きが欠かせません。歯垢ができないよう、しっかりと汚れを落とす必要があります。
お子さまの歯磨きだけでは汚れを落とすことが難しいため、
保護者の方が仕上げ磨きをすることが大切です。仕上げ磨きを習慣化すると、
毎日口の中を観察することができ、虫歯の早期発見にもつながります。
そして、毎日の観察に加えて、歯科医院で定期健診を受けることが、虫歯予防や虫歯の早期発見につながります。
虫歯だけでなく、虫歯になりそうな歯も教えてもらえるため、虫歯になる前に予防することができるでしょう。
また予防処置として当院ではフッ素塗布や、
シーラントを行っていますので気になる方はご相談いただければと思います。
乳歯が虫歯になりやすい原因や乳歯の虫歯の特徴、治療法や予防法を解説しました。
乳歯の虫歯は早期発見・早期治療が大切です。
毎日の歯磨きや、定期検診によって、お子様の歯を虫歯から守りましょう。
2025/09/02
こんにちは。院長の谷田です。
9月頃からは新米が多く出回り始めます。
お米をよく噛むとだ液の分泌が促され、
消化・吸収がスムーズになるほか、
自然な甘みを感じることができます。
お米をよりおいしく味わうためにも、
日ごろからしっかり噛んで食べることを
意識したいですね。
ところで、この「だ液」ですが、
時折、お口の中や唇に水ぶくれのような症状を
引き起こすことがあります。
◆唇や舌にできる水ぶくれ、その正体は?
お子さんのお口の中に
小さな水ぶくれのような膨らみが見つかると、
心配になり、慌てて受診をされるケースが
少なくありません。
このような唇や舌にできる
半透明の膨らみは
「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」の可能性があります。
粘液嚢胞とは、
お口を噛んだり傷つけたりすることで、
だ液を運ぶ細い管が詰まってしまい、
だ液の行き場がなくなって
水ぶくれのようになってしまうものです。
見た目ほど心配なものではありませんが、
自然に消えることは少なく、
繰り返しやすいのが特徴です。
◆痛みはなくても油断は禁物
粘液嚢胞は子どもに多くみられる
お口トラブルのひとつで、
舌の先や裏側、下唇にできやすく、
直径5~15mmと大きさもさまざまです。
ただし、中に溜まっているのはだ液なので、
基本的に痛みを伴うことはありません。
「つぶれると中のだ液が出て小さくなりますが、
「しばらくするとまた溜まって膨らんでくる…
というのを繰り返すのが、
この病気の厄介なところです。
つい自分でつぶしてしまいたくなりますが、
傷口に細菌が入り
炎症を引き起こすおそれもあるため、
気になっても無理に触らず安静を保ちましょう。
◆治療法と注意したいポイント
粘液嚢胞の多くは自然に治ることはなく、
効き目のある塗り薬や飲み薬もありません。
膨らみが小さいものであれば
経過を見守ることもありますが、
根本的に治すには、
原因となっている小さなだ液腺ごと
嚢胞をとり除く外科処置などが必要になります。
特に、舌の裏側のやわらかい部分に
大きく膨らんだ「ガマ腫」と呼ばれるタイプのものは、
放っておくと食事や発音に
支障が出ることもあるため、
早めの受診が安心です。
◆気になる症状は早めの相談を
粘液嚢胞のほとんどは良性ですが、
再発を繰り返したり大きくなったりする場合は
治療を検討する必要があります。
また、まれにですが
別の病気が隠れていることもあるため、
自己判断で放置するのは禁物です。
お口の中に気になる膨らみ・できものを見つけたら、
早めに歯科医院を受診しましょう。
タニダ歯科医院
〒669-1133 兵庫県西宮市東山台1-10-5
TEL:0797-61-2000
URL:https://www.tanidashika.jp/
Googleマップ:https://g.page/r/CUn1zmeIAnWtEAE
2025/08/28
こんにちは、歯科医師の武田です。
「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて
お話しさせていただいております。
どうぞよろしくお願いします。
◆ 咬合平面と顆頭の動き
歯冠修復治療を行うにあたり,咬合平面を整えようと調整することは,
日常当然のこととして行われている。
では,咬合平面にはどのような意義があるのだろう.
また咬合を調整するということは,咬合の問題が起きないように
配慮するということである。
そこで、これらの問題と咬合平面はどのように関わってくるの
だろうという観点から考察したい。
咬合平面は,平面といっても緩やかなカーブを描いている。
歯に加わった力を受け止めるために歯軸の方向と関連した力学的要素
もあるが,動的咬合(機能運動時,非機能運動時)での干渉を,
緩やかな彎曲があることで回避するという要素もある。
だたし,カーブがきつくなると,干渉を引き起こしやすくなる.
すなわち臼歯離開咬合に関与していると考えられる。
顎関節が安定した状態であり,適正な咬合高径でバーティカルストップ
が確立し,アンテリアガイダンスが確保されていることにより臼歯離開咬合
が得られることが,咬合治療の指標となる.それは,顎関節,筋,歯周組織,
歯への負荷の軽減に有益であるからである。
犬歯から第二大臼歯まで,それぞれを人工的にガイド歯になるようにして
作業側顆頭の動きを観察した実験では、顆頭の運動時の力の方向は関節結節,
そして関節円板に向かって沿うように動くことが解剖学的見地から
適正と考えられる.第一小臼歯(かろうじて第二小臼歯も)までは,
動きの方向は関節結節に向かっているが,
大臼歯ガイドでは関節結節から離れるように動くようになる。
顆頭が適正な運動範囲から外れれば,顆頭に付着している外側翼突筋や靱帯
にとって負荷となる可能性がある。
顎運動でのガイド歯が犬歯から臼歯になるにつれて,
咀嚼のストロークは水平になっていく.水平的咀嚼ストロークは,
咬頭干渉を起こしやすい。
この干渉は歯への揺さぶりのメカニカルストレスとなる.
さらに筋肉・顎関節へのメカニカルストレスとなる.
側方滑走運動をガイドする面を、
上顎の近心に向いた咬合小面と下顎の遠心に向いた咬合小面で誘導するM型と
逆に上顎の遠心に向いた咬合小面と下顎の近心に向いた咬合小面で誘導するD型
に分けて考えると、D型は作業側顆頭を後方寄りに誘導しやすく
側方滑走運動のガイド面としてはM型が好ましい。
M型ガイドに比べてD型ガイドにおいては作業側顆頭を後外方に誘導し,
また顎関節断層撮影から3次元再構築した顎関節の空隙を比べると
D型では後方の関節隙が狭くなるという傾向がある。
よって関節包後部の炎症の発症因子として、側方運動時に作業側顆頭を
後方に変位させるガイドの影響が考えられる。
咬合異常が顎機能障害の発症因子であるとする主張に科学的根拠がない
とする意見もあるが、咬合は顎機能障害の発症因子ではないとする
科学的根拠も明確ではなく、特に顎関節への負荷を問題にするとき
咬合の問題を除外して考えることは著しく合理性を欠くように考える。
スタビライゼイションスプリントは、顎関節および関連する筋組織の
疼痛および機能障害に対 して一般的に使用される治療術式である。
その作用機序はかならずしも明らかになってはいないが、
主な効果として均等な歯の接触を与えることによって咬合力を分散させ、
関節構成体に加わる過剰な圧を軽減し、早期接触による部分的な偏った
刺激を断ってブラキシズムのような異常筋活動を減少させるとともに、
顎関節を安定せる効果があり、またスタビライゼイションスプリントは
可逆的かつ非侵襲的な治療法である。
犬歯誘導とグループファンクションとでの咬筋と側頭筋の筋活動を
調べた研究では,犬歯誘導の方が優位に筋活動が少なかった。
しかし,治療するに当たり,すべての症例で犬歯誘導にできるか,
といえば困難であろう。そのような時に有効なガイド歯の研究がある、
犬歯,または犬歯から第二小臼歯までのアンテリアグループファンクション
では,筋活動が少ないが、大臼歯のガイド参加は筋活動の増加を認めている。
筋活動が大きければ,筋疲労に繋がる可能性がある。
臼歯部離開咬合の顎口腔系への優位性は、適切なスピーの彎曲や
ウィルソンの彎曲を有する歯列は,アンテリアガイダンスが適正であれば,
臼歯離開咬合を得やすいと考えられる。
また,左右の咬合平面のなす角度の測定実験結果から,
正常者群は1.4±0.8°であったのが,TMD患者群では3.8±1.7°と有意に大きく,
前頭面で左右的なバランスは2°以内が生体にとって
許容範囲のようであるという興味深い報告がある。
歯や顎関節あるいは筋肉への荷重をコントロールするための診査の一部として、
咬合平面を適正に評価すべきと考えられる。滑走運動時に臼歯部離開が十分に
得られないときは,咬合性外傷が生じる可能性が強いので,咬合平面の評価が
特に重要となる.だたし,咬合平面はアンテリア・ガイダンスが
その役割(臼歯部離開)を十分に果たせる状態であれば,
その方向・傾きは許容性がある。
咬合平面は,解剖学的に理想と思われるものに一致させることは目標であるが,
機能的観点から柔軟に決定することも可能である.
動的咬合時に加わる負荷が問題を起こすが,その動的咬合の始まりと
終末の位置が顎口腔系にとって安定した位置であることも重要である。
咬合平面には許容性があるが,これらが達成されていることが重要である。
歯の健康、美しさを保つには、
定期的なクリーニングがとても大切です
ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。
ご来院お待ちしております。