2025/10/09
こんにちは。歯科医師の毛利です。
朝晩が涼しくなり、過ごしやすい季節になってきましたね。気温の変化で体調を崩さないよう、
羽織るものを用意してお身体を冷やさないようにご注意ください。
今回は「TCH(上下歯列接触癖)」についてお話しします。
■ TCHとは?
TCHとは「Tooth Contacting Habit」の略で、日本語では「上下歯列接触癖」といいます。
本来、リラックスしている時は上下の歯の間に2〜3ミリほどのすき間(安静空隙)があり、
歯同士は接触していません。実際、上下の歯が触れ合うのは、食事や会話の時などを合わせても1日わずか20分程度とされています。
しかし、TCHのある方は無意識に長時間、上下の歯を接触させてしまう傾向があり、
これによってさまざまな問題が起こる可能性があります。
■ TCHによって起こる問題
TCHは以下のような不調の原因になることがあります。
・歯への負担:歯が欠けたり、詰め物が外れやすくなったりする。
・感覚異常:歯を支える歯根膜が圧迫されて貧血状態になり、噛み合わせの違和感や咬合痛を引き起こす。
・顎関節への影響:弱い力でも長時間の接触で筋肉が疲労し、顎関節症(口が開きにくい、音が鳴る、顎の筋肉の痛みなど)を招く
TCHがあるからといって必ずしも症状が出るわけではありませんが、
長期的には不快症状が現れる可能性が高くなるため、早期の段階で気付き改善しておくことが重要です。
■ TCHのチェック方法
以下の方法で、ご自身にTCHがあるかどうかを簡単に確認できます。
①姿勢を正して正面を向き、目を閉じる。
②唇を軽く閉じる。
③上下の歯が触れないように軽く離す。
この時に違和感を覚えるようであれば、TCHの傾向があるかもしれません。
■ TCHの原因
TCHの主な原因には、以下のような日常的な要因があります。
・パソコンやスマホを長時間使用し、前かがみの姿勢になることで、自然と歯が接触しやすくなる。
・日々の軽い緊張やストレスが持続し、無意識に歯を噛みしめてしまう。
■ TCHの改善方法
TCHは無意識の癖なので、意識してすぐにやめるのは難しいですが、次のような対策が有効です。
・意識づけ:
パソコンやテレビの近くに「歯を離す」と書いたふせんを貼り、
それを見るたびに歯を離す習慣をつける。
・リラックス習慣:
ストレス発散の方法を見つけ、心身をリラックスさせる。
・基本姿勢を意識する:
「唇を閉じて、上下の歯は離す、頬の筋肉の力を抜く」これを1日数回、意識的に練習してみる。
これらが「歯が触れないのが正しい」という新しい癖を作る第一歩になります。
■ まとめ
TCHは多くの方が無意識に行っている癖ですが、それに気づいていないケースがほとんどです。
「歯は食事や会話以外のときは触れないのが正常」という意識を持つことが、改善の第一歩になります。
もし、すでに顎や歯に違和感を感じている場合は、早めにご相談ください。マウスピースを使った治療や、
生活習慣のアドバイスなど、症状に応じたサポートを行っています。
この記事を読んで「今、歯がくっついてるかも…?」と感じた方は、
ぜひ今日から「歯を離す習慣」を始めてみてください。
2025/10/02
こんにちは
歯科医師の法貴です
今回は嚥下内視鏡検査についてです。
VE検査は、嚥下内視鏡検査の略称です。
これは、食べ物や飲み物を飲み込むときの“のど(咽頭・喉頭あたり)の動きを、内視鏡を使って直接観察する医療検査です。
「嚥下」とは、「飲み込む」動作を指します。つまり、食べたり飲んだりしたものが口からのどを通って胃に入る過程です。
この過程に問題があると、むせたり、食べ物が気管に入ってしまうこと(誤嚥)などが起こる可能性があります。
VE検査は、こうした“飲み込みの異常”を調べる手段の一つです
どうやって行うか(検査の流れ)
内視鏡を挿入する
非常に細い“ファイバースコープ”という内視鏡を鼻の穴(鼻腔)からそっと入れて、のどの近くに到達させます。
このとき、多少の違和感はありますが、局所麻酔などで楽にする配慮がされることがあります。
飲み込む様子を観察する
内視鏡がのど近くに位置した状態で、少量の“着色したとろみ水”や“ゼリー”など、
飲みやすく安全性のあるものを口に含み、飲んでもらいます。
飲み込むとき、スコープ先端の視界が白くなって見えなくなる瞬間があります(「ホワイトアウト」現象)。
そのため、飲み込みそのものを直接見るのは難しいことがありますが、飲み込みの直前と直後の様子から、
飲み込むタイミングや飲んだ後の残り具合を判断します。
残り具合、誤嚥の有無などをチェック
飲んだ後にのどに食べ物や水が残っていないか(残留)、また気管に入りそうになっていないか(誤嚥傾向)を調べます。
さらに、のどの粘膜(表面)や声帯・喉頭(こうとう)の動きも観察します。
結果をもとに対策を考える
検査で得られた情報を使って、その人が安全に食事できる「食べ物の形(例えば固さやとろみなど)」や、
「飲むときの姿勢(頭の傾きなど)」を決めることがあります。
また、必要なら嚥下リハビリ(飲み込みを訓練する)を始める判断材料にします。
検査全体の所要時間は、だいたい 15~30分程度 が多いとされています。
VE検査の長所・メリット
X線(レントゲン)を使わないため、 放射線被曝がありません。
搬送(移動)が難しい患者さんの病室でも行える 携帯性 がある検査です。
実際の飲み物や食べ物に近い状態で飲んでもらえるので、「普段の飲み込み状態」に近い評価が得られやすいです。
注意点・限界・リスク
内視鏡を入れるため、鼻やのどを少し刺激して、出血や痛み・不快感を起こす可能性があります。
検査中に誤嚥が起こるリスクもわずかにあります(検査を安全に行うため、吸引器具などを準備しておく医療機関がほとんどです)
検査中は「ホワイトアウト」で飲み込みの瞬間の映像が見えないことがあるため、
飲み込みそのものを直接見ることができないという限界があります。
内視鏡を入れた状態と、普段何も挿入していない状態とでは多少の誤差が出る可能性があるため、
検査だけで結論を出すのではなく、普段の食事場面の観察も含めて総合的に判断されます。
当院も嚥下内視鏡検査の診療をしています。
何かお困りのことがあればご相談ください。
2025/10/02
こんにちは。院長の谷田です。
今年は秋の味覚であるサンマが大漁です。
サンマなどの青魚に多く含まれるDHAは
認知症予防にも役立つ可能性 があるとされ、
積極的に摂りたい栄養素のひとつです。
実は認知症には食事や生活習慣だけでなく、
お口の健康も深く関わっていることが
わかってきています。
◆歯が減ると記憶力が落ちる?
~歯の本数と認知症
年齢を重ねると歯の本数が減り、
これにより噛む力が弱まってしまいます。
噛む力が弱まると、食事や体調面だけでなく、
「認知症」の発症にも影響することが
多くの研究で示されています。
ある研究では、65歳以上で歯がほとんど残っておらず、
入れ歯も使っていない人は、
20本以上ある人に比べて認知症のリスクが
約1.9倍も高いという結果がでています。
「噛む」という行為は
単に食べものを細かくするだけでなく、
あごの筋肉を動かして
脳に刺激を届ける役割も担っています。
歯が減ってしっかり噛めなくなると、
脳への血流や刺激が減少し、
その働きが弱くなってしまうわけです。
◆歯周病は「アルツハイマー型認知症」の
引き金に
近年は歯の本数だけでなく、
歯周病も認知症に
影響を与えることがわかってきました。
別の研究では、歯周病の人はそうでない人と比べて、
アルツハイマー型認知症のリスクが
約1.7倍も高いと報告されています。
アルツハイマー型認知症は、
脳に「アミロイドβ」という
老廃物のようなものが溜まり、
記憶力や判断力が低下していく病気です。
実は、歯周病菌が体に入り込むと、
アミロイドβが作られやすくなり、
認知症のリスクを高めるおそれがあるのです。
◆歯が20本あれば割引される保険商品も!?
こうした研究結果は、
医療以外の分野でも活用されはじめています。
最近では、ある生命保険会社が
70歳以上で歯が20本以上残っていれば
保険料を割り引く、という
認知症保険の商品を発売した例もあります。
このように、お口の健康と
将来の健康リスクのつながりが
より一層社会でも認識されてきています。
◆「人生100年時代」の今、できること
「いつまでも自分らしく元気に過ごしたい」
というのは多くの人に共通した願いであり、
その実現には”お口の健康”が欠かせません。
歯や歯ぐきを守ることは認知症のみならず、
糖尿病や心臓疾患、脳卒中の予防にも
役立つといわれています。
日々のセルフケアに加え、
定期的に歯科を受診してお口の環境を整えることは、
健康寿命を延ばす第一歩です。
未来の自分、そして大切な家族のためにも、
今日からできることを一緒にはじめていきましょう。
タニダ歯科医院
〒669-1133 兵庫県西宮市東山台1-10-5
TEL:0797-61-2000
URL:https://www.tanidashika.jp/
Googleマップ:https://g.page/r/CUn1zmeIAnWtEAE
2025/09/25
こんにちは。歯科医師の岩本です。
皆さんは、食事をどのくらいの速さで終えていますか?仕事や家事に追われ、つい「早食い」になってしまう方も多いのではないでしょうか。
実は、早食いはお口の健康だけでなく、全身に様々な悪影響を及ぼすことが分かっています。
まず、かむ回数が減ることで唾液の分泌が少なくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
唾液には口腔内の汚れを洗い流す自浄作用や、虫歯を作る酸を中和する働きがあるため、しっかりかむことは口腔環境の維持に欠かせません。
さらに、あまりかまないまま飲み込むと胃などの消化器官に負担がかかります。
加えて、脳が「満腹」を感じる前に食べ終わってしまうため、必要以上に食べ過ぎて肥満や生活習慣病につながることもあります。
⭐「かむ力」のセルフチェック
では、普段の食事で「自分がゆっくりよくかめているか」を確認する方法はあるのでしょうか。
おすすめなのが、スマートフォンを活用したセルフチェックです。今は健康管理アプリが多く登場していますが、今回は「おくちトレーナー」というアプリをご紹介します。
「おくちトレーナー」https://www.morson.jp/o-trainer/
こちらは、かむ・飲み込む・口を動かすといったお口周りの機能を楽しくトレーニングできるアプリです。
カメラで食事中の顔の動きを撮影すると、咀嚼の回数が自動的に数えられます。
確かに、かむ度にきちんとカウントされていき、なかなか面白いです。
ゲーム感覚で使えるため、子どもから大人まで取り入れやすく、食事の際のかみ方の意識づけにも役立ちます。
「よくかむ」という行為は、一見すると小さなことに思えますが、歯と口の健康、そして全身の健康を守る大切な習慣です。
まずは食事の時間を少し意識して、ゆっくり味わうことから始めましょう。そして、アプリを活用して楽しみながらチェックを続ければ、長く習慣化しやすくなります。
日々のちょっとした工夫で、未来の健康は大きく変わります。
「早飯食い」から「ゆっくりよくかむ食習慣」へ、今日から一歩踏み出してみませんか。